こんにちは。東京都八王子市にある行政書士MSオフィス代表の森本さやかです。当オフィスは建設業許可を専門としており、建設業に関するあらゆるお悩みを解決すべく、皆様のサポートをさせていただいております。
今回は経営事項審査(経審)の簡単な説明とその評価基準の一つである「担い手の育成及び確保に関する取組の状況」における「W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)」について解説させていただきます。
この「W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)」は、審査基準日が令和5年8月14日以降の会社が経審の申請をする際に新たに適用されますので、申請する際は必ず確認しておきましょう。
なお審査基準日とは会社の「決算日」のことです。経審の申請日ではないので注意しましょう。
では本題に入る前に、経営事項審査(経審)とは、どのようなものなのでしょうか?
経営事項審査(経審)とは?
経営事項審査(経審)とは、企業の経営規模、経営状況、技術力、その他審査項目(社会性等)を総合的に分析し、その企業の総合評定値(P)を客観的に算出する審査です。
経審を受けるメリットとして主に以下の3つがありますので、これから公共工事も受注して新たな売上の柱を作りたい建設業者さんにはおススメの制度になります。
- 公共工事の入札の参加が可能になる
- 客観的な自社の経営力や技術力等について把握できる
- 要件が設定されている民間工事(経審の点数〇〇〇点以上等)に参加できる
では次に経審の総合評定値(P)とはどのように算出するのでしょうか?
総合評定値(P)の算出方法と審査項目
経審の総合評定値(P)の式は以下のように表されます。
P = 0.25 × X1 + 0.15 × X2 + 0.20 × Y + 0.25 × Z + 0.15 × W
経営規模:X1、X2
経営状況:Y
技術力 :Z
その他審査項目(社会性等):W
建設業者さん各々の状況を4つの評価基準である「経営規模・経営状況・技術力・その他審査項目(社会性等)」から評価することが経審になります。
本記事では、社会性等における「W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)」の点数アップのポイントについて解説いたします。
経営事項審査全体の説明については以下を参照してください。
では、「W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)」について説明させていただきます。
W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)とは?
W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)とは?
経審における「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」とは、CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用状況を加点対象とすることです。
ではCCUS(建設キャリアアップシステム)とはどのようなものなのでしょうか?
CCUS(建設キャリアアップシステム)とは?
CCUS(建設キャリアアップシステム)は、技能者ひとり一人の就業実績や資格を登録し、 技能の公正な評価、工事の品質向上、現場作業の効率化などにつなげるシステムで、事業者と技能者の双方にメリットがあります。
詳細は以下の記事をご参照していただけますと幸いです。
経審で加点される「審査対象工事」と「加点要件」
前章を踏まえて、CCUSを活用していれば経審で加点されることはご理解いただけたと思います。
ただ、2点注意すべきポイントがあります。
- Ⓐ 審査対象工事
→すべての工事が対象となるわけではありません。 - Ⓑ 加点要件
→CCUSを活用していれば必ず加点される訳ではありません。
上記2点ⒶⒷの要件を満たしていないと経審では加点されません。では1つずつ詳細を見ていきましょう。
Ⓐ 審査対象工事
CCUSを活用していれば、すべての工事が認められるかというとそうではありません。経審で加点される「審査対象工事」を満たしている必要があります。
具体的には以下のとおりです。
以下の①~③を除く、審査基準日以前1年以内に発注者から直接請け負った建設工事が、審査対象工事になります。
- 日本国内以外の工事
- 建設業法施行令で定める軽微な工事(※1)
- 災害応急工事(防災協定に基づく契約又は発注者の指示により実施された工事)
(※1)軽微な工事
・工事一件の請負代金の額が500万円(建築一式工事の場合は1,500万円)に満たない工事
・建築一式工事のうち面積が150m²に満たない木造住宅を建設する工事
発注者から直接請け負った建設工事でなければならないのがポイントになります。下請けとして請け負った工事では加点対象とはなりません。
Ⓑ 加点要件
続いて加点要件です。CCUSを活用していれば必ず加点される訳ではありません。経審で加点されるには以下の要件を満たしている必要があります。
以下の①~③のすべてを実施している場合に加点します。
- CCUS上での現場・契約情報の登録をしていること
- 建設工事に従事する者が直接入力によらない方法(※2)でCCUS上に就業履歴を蓄積できる体制の整備をしていること
- 経営事項審査申請時に様式第6号に掲げる誓約書の提出すること
(※2)直接入力によらない方法
就業履歴データ登録標準API連携認定システムにより、 入退場履歴を記録できる措置を実施していること等
では、具体的にどのくらいの点数が加点されるのか見ていきましょう。
W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)の算出方法
「W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)」のそれぞれの項目の算出方法は以下のとおりです。
加点要件 | 点数 |
---|---|
審査対象工事のうち、民間工事を含む全ての建設工事で該当措置を実施した場合 | 15点 |
審査対象工事のうち、全ての公共工事で該当措置を実施した場合 | 10点 |
ただし、審査基準日(決算日)以前1年のうちに、審査対象工事を1件も発注者から直接請け負っていない場合には、加点されません。
W(その他審査項目(社会性等))の算出方法
これまではW10の算出方法を見てきました。次にW(その他審査項目(社会性等))全体の算出方法を見ていきましょう。
W(その他審査項目(社会性等)):
( W1 + W2 + W3 + W4 + W5 + W6 + W7 + W8+W9 + W10 )× 1,750 ÷ 200
この式のみではどのくらいの点数が付与されるのか分かりにくいので、具体例を見てみましょう。
W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)が「10点」の場合を見ていきましょう。
10 × 1,750 ÷ 200 = 87.5点 となります。
総合評定値(P)に換算すると、0.15 × 87.5(W) = 13点 となります。(※他の評価項目除く)
W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)の点数アップのポイント
W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)について算出方法が分かったところで、どのようにして点数を上げていけば良いのでしょうか?点数アップのポイントを紹介いたします。
- CCUSを活用する(審査対象工事・加点要件を満たす)
CCUSを活用する(審査対象工事・加点要件を満たす)
CCUSを活用するとともに、審査対象工事の工事を実施し、加点要件を満たすようにすれば経審で加点されるようになります。
ただCCUSの導入にはコストや手間が増えるため、メリット・デメリットを考慮し、自社で必要かどうか判断したうえで導入した方が良いです。
まとめ
今回は経営事項審査(経審)の簡単な説明とその評価基準の一つであるその他審査項目(社会性等)における「W10(建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況)」のポイントについて解説させていただきました。
主なポイントは以下のとおりです。
- CCUSを活用する(審査対象工事・加点要件を満たす)
以上です。ご参考になりましたでしょうか。
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