こんにちは。東京都八王子市にある行政書士MSオフィス代表の森本さやかです。当オフィスは建設業許可を専門としており、建設業に関するあらゆるお悩みを解決すべく、皆様のサポートをさせていただいております。
今回は経営事項審査(経審)の簡単な説明とその評価基準の一つである社会性等における「W5(建設業経理の状況)」の点数アップのポイントについて解説させていただきます。
まずはじめに経営事項審査とは、どのようなものなのでしょうか?
経営事項審査(経審)とは?
経営事項審査(経審)とは、企業の経営規模、経営状況、技術力、その他審査項目(社会性等)を総合的に分析し、その企業の総合評定値(P)を客観的に算出する審査です。
経審を受けるメリットとして主に以下の3つがありますので、これから公共工事も受注して新たな売上の柱を作りたい建設業者さんにはおススメの制度になります。
- 公共工事の入札の参加が可能になる
- 客観的な自社の経営力や技術力等について把握できる
- 要件が設定されている民間工事(経審の点数〇〇〇点以上等)に参加できる
では次に経審の総合評定値(P)とはどのように算出するのでしょうか?
総合評定値(P)の算出方法と審査項目
経審の総合評定値(P)の式は以下のように表されます。
P = 0.25 × X1 + 0.15 × X2 + 0.20 × Y + 0.25 × Z + 0.15 × W
経営規模:X1、X2
経営状況:Y
技術力 :Z
その他審査項目(社会性等):W
建設業者さん各々の状況を4つの評価基準である「経営規模・経営状況・技術力・その他審査項目(社会性等)」から評価することが経審になります。
本記事では、社会性等におけるW5(建設業経理の状況)の点数アップのポイントについて解説いたします。
経営事項審査全体の説明については以下を参照してください。
では、W5(建設業経理の状況)について説明させていただきます。
W5(建設業経理の状況)とは?
W5(建設業経理の状況)とは?
建設業経理の状況は、「①監査の受審状況点数」と「②公認会計士等数点数」を加算して表されます。
つまり、以下の式で算出することができます。
建設業経理の状況点数 = 監査の受審状況点数 + 公認会計士等数点数
では、監査の受審状況点数、公認会計士等数点数とはそれぞれどのようなことを指しているのでしょうか?
① 監査の受審状況とは?
監査の受審状況とは一言で言うとその会社に会計の専門家がどのくらい在籍しているのかを表した指標になります。
経審では会計の専門家を配置していると評価される仕組みとなっています。
監査の受審状況点数は、その会社に会計監査人を設置した場合は20点、会計参与を設置した場合は10点、 経理処理の適正を確認した旨の書類を提出した場合は2点、監査無しの場合は0点がそれぞれ付与されます。(以下表)
監査の受審状況 | 点数 |
---|---|
会計監査人の設置 | 20点 |
会計参与の設置 | 10点 |
経理処理の適正を確認した旨の書類の提出(※) | 2点 |
監査無し | 0点 |
※経理処理の適正を確認できる者の要件は以下のとおりです。
- 公認会計士であって、公認会計士法第28条の規定による研修を受講した者
- 税理士であって、所属税理士会が認定する研修を受講した者
- 1級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
- 1級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
なお、いずれも常勤であることが必要です。
② 公認会計士等数とは?
続いて、公認会計士等数について見ていきましょう。
公認会計士等数とは一言で言うとその会社に経理の専門家がどのくらい在籍しているのかを表した指標になります。
公認会計士等点数は、以下の算出式で算出した数値を、 公認会計士等点数算出テーブルに当てはめて算出します。
(公認会計士等の数)×1 + (2級登録経理試験合格者数)×0.4
※公認会計士等とは以下の者を指します
- 公認会計士であって、公認会計士法第28条の規定による研修を受講した者
- 税理士であって、所属税理士会が認定する研修を受講した者
- 1級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
- 1級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
なお、いずれも常勤であることが必要です。
公認会計士等点数算出テーブルは以下のとおりです。
平均完成工事高(億円) | 10点 | 8点 | 6点 | 4点 | 2点 | 0点 |
---|---|---|---|---|---|---|
600以上 | 13.6以上 | 10.8以上 13.6未満 | 7.2以上 10.8未満 | 5.2以上 7.2未満 | 2.8以上 5.2未満 | 2.8未満 |
150以上600未満 | 8.8以上 | 6.8以上 8.8未満 | 4.8以上 6.8未満 | 2.8以上 4.8未満 | 1.6以上 2.8未満 | 1.6未満 |
40以上150未満 | 4.4以上 | 3.2以上 4.4未満 | 2.4以上 3.2未満 | 1.2以上 2.4未満 | 0.8以上 1.2未満 | 0.8未満 |
10以上40未満 | 2.4以上 | 1.6以上 2.4未満 | 1.2以上 1.6未満 | 0.8以上 1.2未満 | 0.4以上 0.8未満 | 0.4未満 |
1以上10未満 | 1.2以上 | 0.8以上 1.2未満 | 0.4以上 0.8未満 | - | 0.2 | 0 |
1未満 | 0.4以上 | - | 0.2 | - | - | 0 |
この算出式と算出テーブルでは分かりにくいと思いますので具体例を見ていきましょう。
会社内に税理士(会計参与)が1人在籍しており、平均完成工事高が1億円未満の場合を見ていきましょう。
(公認会計士等の数)×1 + (2級登録経理試験合格者数)×0.4
( 1 )×1 + ( 0 )×0.4 = 1
となり、「公認会計士等点数算出テーブル」に当てはめると0.4以上であるので、10点となります。
W(その他審査項目(社会性等))の算出方法
これまではW5の算出方法を見てきました。次にW(その他審査項目(社会性等))全体の算出方法を見ていきましょう。
W(その他審査項目(社会性等)):
( W1 + W2 + W3 + W4 + W5 + W6 + W7 + W8 )× 1,750 ÷ 200
この式のみではどのくらいの点数が付与されるのか分かりにくいので、具体例を見てみましょう。
W5(建設業経理の状況)が「20点」の場合を見ていきましょう。
20 × 1,750 ÷ 200 = 175点 となります。
総合評定値(P)に換算すると、0.15 × 175(W) = 26点 となります。(※他の評価項目除く)
W5(建設業経理の状況)の点数アップのポイント
W5(建設業経理の状況)について算出方法が分かったところで、どのようにして点数を上げていけば良いのでしょうか?
- 社員に建設業経理士等の資格を取得してもらう
- 会計監査人・会計参与の設置を検討する
公認会計士・税理士の資格取得はハードルが高いですが、建設業経理士であればそれらと比較して取得のハードルは下がりますのでおススメです。
特に建設業経理士2級以上を取得することで自己のスキルが向上し、建設業の経理を行う上で非常に約に立ちますので、積極的に社員の方に取得を目指してもらうようにしましょう。(資格取得報奨金の制度を用意すると尚良いです。)
また、会計監査人・会計参与を設置することでも経審の点数はアップします。こちらは経審の点数アップのみでなく、対外的な信用も増加しますので、是非検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は経営事項審査(経審)の簡単な説明とその評価基準の一つであるその他審査項目(社会性等)における「W5(建設業経理の状況」の点数アップのポイントについて解説させていただきました。
- 社員に建設業経理士等の資格を取得してもらう
- 会計監査人・会計参与の設置を検討する
以上です。ご参考になりましたでしょうか。
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